皆さん、『桃色ウサヒ』をご存じでしょうか。
山形県朝日町の広告塔として町内外で精力的にPR活動を行っている、ウサギタイプのゆるキャラです。
朝日町の公式PR動画や公式ホームページ、刊行されている冊子にがっつり登場して画面(紙面)を賑わしているのですが、ここまでやってるのにこのウサギ、なぜか非公式なんです。公式のゆるキャラになることを夢みて、仕事を選ばずがむしゃらに活動している健気なウサギ。その甲斐あって、町民はみんな『桃色ウサヒ』をよく知っており、「桃色ウサヒってなに?」と聞くと「あーそれはね」と言ってちゃんと説明できるのだそう。
これほどまでにその存在が町民に浸透していて、かつ広告塔として大活躍しているにも関わらず、なぜか非公式。これはなにかありそうです。
通常、ゆるキャラというものは”そういう生物”として存在しており、中の人などいるはずもないんですが、『桃色ウサヒ』の場合、中の人が明確に存在します。
ウサヒウサヒ~ウサヒが住んでるあ~さ~ひ~まち~♪のメロディラインがキャッチーすぎて耳を素通りして直接脳に入ってきます。スーパーの鮮魚コーナーに通じる圧倒的な浸透性。JOYSOUNDにも入っていて、カラオケで歌い放題という脅威の地域PRソングです。
あと、『桃色アサヒ』は中の人の存在を明言しているだけでなく、顔出しすらもOK。というか、むしろ誰が中に入ってもいいという開放っぷり。
というわけで、『桃色ウサヒ』の中の人、佐藤さんに会ってお話しを伺ってきました。
(いま「桃色ウサヒの朝日町探検」聞いてて思ったんですが、これ歌ってるの佐藤じゃないかな。いい声してる)
PR動画にもあるように、朝日町には駅がありません。なので、隣町にある駅まで電車で行き、そこで佐藤さんと合流。ウサヒを格納および運搬するために購入したというバンで朝日町を案内していただきました。
朝日町の人口は約7000人。主な産業はふたつあり、そのうちの一つはりんごで、崖の上とか川の水面ギリギリの土地までりんご畑化されています。連日の大雨で絶賛増水中の最上川だったのですが、「水滴かかってるんじゃない?」というところまでりんごの木が植えられています。りんご農家の方は経験的に増水の影響を受けるところと大丈夫なところを把握しており、強引とも思える川辺の畑化を成功させているのだそうです。
朝日町のもうひとつの産業は、ワイン。G7伊勢志摩サミットのランチに採用されるほど高品質です。『朝日町ワイン城』というワイナリーでは、なんと無料で数十種類のワインが試飲できます。そしてどれもまじで旨い(お世辞じゃなくて、ほんとにうまい)。気になるものを片っ端から飲んでは「えっこれ旨っ!」を連発していたのですが、いつまでも飲めそうで際限なかったので、名残惜しくもあとにします。
次に連れていってもらった、佐藤さん一押しの定食屋・西郷亭でちょうちん弁当なるものを食べました。
提灯の形をしたお膳に、ごはんとおかず、そしてそばが入ったガッツリ飯。なぜわざわざ提灯型のお膳に入っているのかはわかりませんが、この形のものを使用しているお店は、全国に2件しかないのだそう。破損したら仕入れに大変なコストがかかりそうなので、慎重に扱いながら食します。
ちなみに、写真右奥にある赤色の冊子は『朝日町タカラモノガタリ』といういいところをまとめたガイドブック。単に「こんなんあるよ」と紹介するのではなく、モノが持つストーリーを丁寧に拾い、魅力を届けようとする気持ちで作られています。朝日町には、このようなまちの情報が書かれた冊子や広報誌がフリーペーパーとして公共施設に置かれており、僕みたいなまちの情報を集めるために日々彷徨い歩いているようなやつにはめちゃくちゃありがたい。
あともうひとつ。朝日町はふるさと納税にも力を入れており、返礼品そのものの質の高さはもとより、返礼品を入れる箱のデザインにもこだわっています。ふるさと納税する側に立って設計されており、平成26年度に183 件360万円だったのが、リブランディング後の翌27年度には7,605件7830万円にまで劇的にアップしたそう。1年でふるさと納税額が20倍以上になるとか前代未聞。なにがいいのか気になる方は、実際に朝日町にふるさと納税してみてください。すべてわかります。
ウサヒの中の人こと佐藤さんは、ゲストハウス松本亭一農舎の運営もされていて、そちらの見学もさせてもらいました。母屋と小屋が短い廊下で繋がっており、蔵の中に本棚があるのですが、これをどうにかすると、
扉のように開き、二階への階段が現れます。おっさんになってもこういうギミックに胸が躍る。
あと、米1合がガシャポンに入っていて200円で買えたり、見たことのないボードゲームが大量にあり、少年のこころをくすぐられまくりです。
…といったところで、一旦締めましょう。朝日町面白すぎたので、二部構成にします。
後編につづく