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レプログ

武川 和憲Take

2017.10.09

エーゲ海だけじゃない!牛窓の隠れた魅力を『ウシクエ』で探してきた

あれはそう、真夏の暑い日。8月1日に入社し、レプタイル社員としてまだ首も座っていない10日頃のこと。
隣の席に座る社長が突然、

「タケさん、ウシマド行ってきて」

と。

タケ「え、ウシマドって"日本のエーゲ海"の牛窓ですか?」
社長「そう。行ったことある?」
タケ「いや、ないですけど。なにするんですか?」
社長「9月半ばに『ウシマド街角クエスト』っていう、まちを冒険するアプリを作るためのワークショップがあって」
タケ「はい」
社長「それが3日間あるんだけど、僕、別件があって全部は出られないんだよね。だから代わりにやってきてほしい」
タケ「なるほど、そういう事情なんですね。わかりました!(全然わかんねぇな…)」

ということがあり、なにやら【『ウシマド街角クエスト』っていうまちを冒険するアプリを作るためのワークショップ】に急遽参加することとなりました。

(あとで聞いたところによると、『ウシマド街角クエスト』は、ダンクソフトという東京の企業とウシマド町家スタイルという牛窓の市民団体が共同開発中の街歩きスマホアプリのことで、様々なヒントを手掛かりに探偵のように謎解きしながら、まちの隠れた魅力を見つける、というものなのだそう。

※記事を執筆した2017年10月7日現在、すでにリリースされており、以下からダウンロードできます。
Google playからはこちら▼
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.dunksoft.guidesan.ushimado
App Storeからはこちら▼
https://itunes.apple.com/us/app/ウシマド街角クエスト/id1258054225

わからないなりに面白そうな気配を感じたので引き受けたのですが、そもそも牛窓ってどこにあるんでしょうか。岡山県内の海の近くという漠然としたイメージはあるけど、正確な場所がわかりません。なので、ググりました。ここです。(なんて便利な世の中)

岡山市の東側でした。弊社がある津山市からは、まっすぐ南下してどこかでクイッと曲がれば着きそうです。
”牛窓”というワードには馴染みがあるのですが、同じ岡山県内にあっても、行ったことがない場所。知らないまちに行くというのは、とてつもなくワクワクします。

というわけで、「タケさん、ウシマド行ってきて」と言われてから約1ヶ月後、9月19日-21日で『ウシマド街角クエスト』(通称:ウシクエ)ワークショップに参戦してきました。

 

■ウシクエワークショップ1日目

『ウシクエ』というものがどういったアプリなのかはおおよそ理解できたのですが、それを作るワークショップってなんなのでしょう。
元SE(システムエンジニア)ということでプログラミングの腕を期待されているのでしょうか。だとしたら、不安が半端ではありません。なにせ、前職で長年システム開発に携わりながら、プログラミングというものをほぼしたことがないのですから。

誰か「きみ、SEだよね?プログラミングできるんでしょ?」
タケ「あ、いや、そういうのはですね、あんまり得意ではないんですよ」
誰か「…は?なんで?」
タケ「え」
誰か「得意じゃないのに、じゃあなんで来たの?」
タケ「なんでというか、その…上司に言われたので」
誰か「きみは上司に言われたらどこでも行くの?沖ノ鳥島で1週間キャンプして来いって言われたら行くのか?」
タケ「あ、でも、それはちょっとまじで行ってみたいですね」

という展開を想像したことによる謎の吐き気に襲われながらも、必死で車を運転し、牛窓に到着。

集合場所である港の前には、めっちゃきれいな海が広がっていました。防波堤に座って繰り返す波の音を聞きながら、海が運んでくる心地よい潮風を感じることしばし。

続々と集まったワークショップ参加者は、ダンクソフトの方々、ウシマド町家スタイルの方々、瀬戸内市の地域おこし協力隊や市役所の方々、建築の先生、コンサルティングのプロなど様々。
想定していた『誰か』のような僕を精神的に追い込んでくるようなひとはおらず、みなさん温かい心を持った良識あるひとたちでした。

 

さて。

各自名刺交換を済ませると、ひとまず昼食を摂ることに。場所はここ、歯医者さんの住居部分を改装して作った汐まちカフェ

一階が住居、二階が診療スペースという珍しい作りの建物で、汐まちカフェは建物の一階部分にあります。
とろろこんぶ風の海藻がスパイスとライスをいい感じに繋げてくれる『汐まちカレー』や、
レモンの酸味とエビ出汁の甘みが爽やかな調和を生み出している『海老汐ラーメン』など、
牛窓ならではのランチを堪能。
各自の自己紹介と、ウシクエワークショップの概要説明(プログラミングではなく、まちを歩いて観光者の導線を作るというもの。助かった)を行い、実際に試作の『ウシクエ』をやってみることに。

アプリを開くと、こういう画面が出てくるので、

ルートを選び、
謎に回答しながら

牛窓のことを深く知りつつ、まちを歩き回るのが”クエスト”というものらしい。

ところで、なんですが。まちを歩きながら、当初からずっと解決されない疑問がありました。
それが、

「エーゲ海ってどのへんが?」

まあ本物のエーゲ海を見たことがないのでなんとも言えませんが、まちを歩いてるぶんには、エーゲ海っぽさは特にありません。造船で成ったまちらしく、趣のある古い商家が軒を連ねる風景は非常に日本的。

このことを牛窓のひとに聞いてみたところ、次のような回答でした。

エーゲ海っぽく見えるのは、山の上の別荘地やオリーブ園などの高台から瀬戸内海を見た場合。観光客はそこから海を眺め、写真撮って帰っていき、牛窓の人たちが暮らす海抜1mとかのところまではなかなか来てくれないし、よしんば来てくれたとしても、どこを歩けばいいかわからずにやはりすぐ帰ってしまう

だそう。

そのことによって生まれた「まちなかを歩いて牛窓をもっと楽しんでもらいたい!」という想いが、『ウシクエ』プロジェクトの核なんだそうです。

 

で、チームに分かれてクエスト作成ワークショップを開始したんですが、なんとなく立ち寄った神社でおびただしい数のネコの群れに遭遇。

階段の上で寄り添う2匹。仲良しかと思いきや、

そこには圧倒的な上下関係が。
「おまえ、もし裏切ったりしたらこの階段から…な?わかるよな?」
「ちょっやめてくださいよ~。僕が兄貴のこと裏切るわけないじゃないっすか~、へへっ…」

という、普段人間の目に触れることがないネコ社会の闇がつまびらかになっていたため、「スクープや!これはスクープやで!」と言いながら写真撮りまくるという明らかな時間的ロスを生み出してしまいました。そのせいで、我がチームはクエストが完成に至らないという事態に。(すいませんまじで)

夜は牛窓唯一の飲み屋(たぶん)で腹いっぱい食べ、しこたま飲み、そのあと宿に移動して酒を片手に、日付が変わるまで『ウシクエ』のことや牛窓の今後についてなど、色んなことを話しました。
前向きな発言しか出ない飲み会がこれほど楽しいものだとは。
満足感のなか、古民家の居間で蚊取り線香の懐かしい香りを微かに感じながら、眠りに就きます。

 

■ウシクエワークショップ2日目

さて、今日は本格的にクエスト作成を行います。
それぞれ事前にテーマを決め、それに従ってまちを歩きながらクエストを作ります。
僕が所属するチームBのテーマは(不本意ながら)『たけやんが旅人視点で発見したローカルな魅力』とすることに。
前日の飲み会で、僕の「こないだまで日本を旅してた」という話に興味を持ってくれたイマナカさん(顔文字の下のひと)の発案なんですが、正直プレッシャーがえげつない。
このままでは、僕が面白い何かを複数発見できなければ、このチームBは終了してしまいます。
なんとか別のテーマに変えられないかと模索していたところ、まちの生き字引に出会うことができ、
「ここは昭和のころは大繁盛していて、”牛窓銀座”と呼ばれてた」
という一言に「これしかない!」と感じた僕は、
「テーマを『昭和にタイムスリップ!牛窓銀座の栄光を探せ!』にしましょう!」と強引かつ怪しまれないようにテーマ変更を提案し、承諾を得ることができました。

 

さて、”牛窓銀座”ですが、例えば、いまはかまぼこ屋さんになっているこの建物。
昭和の時代には映画館、その前は劇場として使用されていたそうです。年末には人気俳優が出演する『忠臣蔵』が上演され、多くのひとが殺到する牛窓の一大エンタメ基地として機能していたらしい。

牛窓は古くからの港町で、2千人を超える船大工集団による造船、船で運ばれてくる荷物の売買、船乗りや船大工へのサービス提供で成り立っていました。まちは、船に積み下ろしする荷の保管場所である港、生活用品を買い物するための商店街、船乗りや船大工が飲んで遊ぶ花街、船を作る造船街の4つの区画にわかれており、いまでもその痕跡を偲ぶことができます。

▼料亭として使用されていた建物。かつては海岸線がもっと手前にあったため、船を横付けして座敷に上がり込む仕組みになっていたらしい

▼こちらは元・御茶屋。港に面した激シブな建物。いまはギャラリーとして活用されている

朝9時から午後3時まで歩き回って調査し、その後、宿でクエストを作成。
作成もスマホで行えるので、仕事中の大人が全員静かにスマホをいじっているという不審な画に。

この日は、各チームが作成したクエストをレビューしながら宿で夕食を摂り、そのまま飲み会に突入。昨日の夜より濃い話が展開されてましたが、抗いきれない睡魔に襲われた僕は、座っていた座布団を丸めて枕にし、朝まで眠りこけたのでした。

 

■ウシクエワークショップ3日目

3日目最終日。この日は、2日目に作ったクエストをやりながら街歩きをしよう!ということに。
こうして歩いてると、道行くひとに「なんの集団?」と何度も声をかけられました。(なかには「学生さん?」という、だとしたら何十年留年してんだよというツッコミ待ちなのかと疑うような声のかけ方をするひともいた。何はともあれ、牛窓のひとたちは温かい)

アプリのスクショ貼るとアレなので、海辺で拾ったタコちゃんにルートを案内してもらいましょう。

 

「どうも、タコちゃんでやんす!わてくしが造船街として繁栄していた牛窓東町を案内するでやんす!よろでやんす!」

「いまでも造船所として稼働しているところがあるんでやんす!ここは映画やドラマのロケ地にもなってるでやんす!」

「豪商・服部家の蔵でやんす!『服部家の土地だけを歩いて20km以上離れた岡山まで行ける』と言われたぐらいの、ものすごい土地持ちなんでやんすって!」

「カサカサカサカサ」
「カサカサカサカサ」

「ぎゃー!!!!!」

「来てないでやんすか…?サメ、追いかけてきてないでやんすか…?」

「芸術が爆発でやんす!」

「ちょっと疲れたでやんす…そろそろ海が恋しいでやんす…」

「海でやんす!帰ってきたでやんす!というわけで、わてくしがご案内できるのはここまで!ばいばーいでやんすー!」

はい。
以上、タコちゃんによる牛窓案内でした。ありがとうございました。(案内してなくね?)

タコちゃんが帰っていったのは、牛窓の一番奥にある牛窓海水浴場。
その近くに、牛窓の隠れた名所『牛窓神社』があります。
この360段もある鬼のような石段を登っていくと、「いやもう乳酸が…マジ無理なんですけど…」となったあたりで 立派な山門が登場。さらに登ると、
本殿が。

ここの神主さんがめちゃくちゃユニークな方で、参拝者(僕たち)と軽く立ち話をしていると突然、
「それではこちらへどうぞ」
と僕たちを本殿の前に導き、立ち話の内容から即興で作ったオリジナルの祝詞をあげはじめたのです。
戸惑いながらも、手を合わせるわれら。
優に5分はありました。凄まじい神主だ。

 

という感じのウシクエワークショップの3日間。

『街角クエスト』はウシマドだけでなく、すでにシリーズ化が決まっていて、これから全国の街まちの隠れた魅力を発掘するのだそう。
もしかすると、あなたのまちにも行くかもしれません。

 

【おまけ】
ちなみに、牛窓町が属する瀬戸内市には、『日本一のだがし売り場』という夢のようなお店があり、

案の定、爆買いすることに。

ここ、めちゃくちゃ楽しいのでおすすめです。
いまなら憧れのうまエモンになれますよ!

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