みなさん、【花嫁のれん】というものをご存知ですか?
旧加賀藩には、絢爛豪華な暖簾(のれん)を拵えて、嫁入りする日に嫁ぎ先の仏間の入り口に掛け、花嫁がそこをくぐってご先祖さまにご挨拶するという習わしがあります。それに使われるのが花嫁のれん。
例えばこういうのとか。
こういうのとか。
これを母から娘へ代々受け継いでいくんですが、こんな綺麗なものなのに、30年に1回くらいしか日の目を見ることがないんです。
ずっと箪笥の奥にしまわれてしまっている。実にもったいない。
これに目をつけたのが、市街地の一本杉通りにある北島屋茶店店主で元町会長の北林さん。
各地から花嫁のれんを集めてきて花嫁のれん展を開催し、多くのひとを魅了しました。今年で14回目だそうです。
花嫁のれん展を始めた当時は、花嫁のれんに対して"綺麗な古着"という感覚だったので、触っていいし、なんなら匂いを嗅いでもいいという風にしていたそうで、歴史ある古い町並みに綺麗な暖簾がかかっている様がSNSで拡散されて全国からドッとお客さんが来たそうです。
が、しかし、同時に役所にも花嫁のれんの価値が見つかってしまい、「誰彼が触っていいものではない」ということで、悲しいかな、花嫁のれんは博物館のガラスケース行きになってしまいました。
いつでも見られるという意味では良いのかもしれませんが、やっぱね、間近で見られてしかも触れるっていうことには勝てないですよ。
花嫁のれん展のルーツは、北林さんが「七尾を活気あるまちにしたい」と思ったことにあり、まず、ご自身のお店がある一本杉通りの歴史ある建物群を国登録有形文化財にすることから始められました。
当時は「こんな古いだけの建物になんの価値があるんだ」と町内会にも役所にも大反対を食らったそうですが、建物のポテンシャルを信じて突き進んだ結果、全部で5つの物件を国登録有形文化財化することに成功しました。
この過程で北林さんは「まちおこしには文化財化が必要なんだ!」と皆を説得したのですが、いざ文化財化が成功したとき、文化財化批判勢から「これをどう観光資源として活用するのか」というツッコミを受け、追い詰められた時に商店街の女将さんが持ちかけたのが花嫁のれん展だったのだそうです。
「危なかった。渡りに船だった」と笑う北林さん。
「商店街ひとつが一時的に湧いても意味がない。七尾が継続的に湧き上がらないとだめだ」という考えのもと、地元の普通のお店の人が観光案内をしてくれる『語り部処』の提案や、商店を回ってハンコ(消しゴム判子。クオリティ高くてかわいい)を集める取り組み、ゴミゼロ化(道沿いにゴミを置かない+家庭ゴミを削減する)、JTB文化交流賞受賞などめちゃくちゃ多動的に活躍されているすごいひとです。
また、まちおこしについても
「やるなら徹底的にやらないと駄目だ」
と熱を持って語ってくれました。
「例えば輪島塗。輪島に行ってご飯を食べる時に、出て来た箸が割り箸だったらがっかりするでしょ?全部の店、全部の家庭で輪島塗りの食器を使って、外に食べに行くにも輪島塗の箸を持って行ってこれで食べるくらい徹底しないと『輪島塗のまち』とは言えない」と。
津山は桜のまちだと僕は認識しているんですが、そうですね、これで言うとまだまだ、というか、単に城跡に桜植えてるだけですしね。学ぶことが多い。
かなり長い時間お話しくださり、昼ご飯まで誘って頂いたんですが、もうひとつ気になるところがあったので、辞去してそちらへ向かいます。
それというのが、banco
御祓川(みそぎがわ)大学のメインキャンパスで、一本杉通りの入り口付近にあります。
御祓川大学とは、七尾を小さな世界都市(世界に通用する文化や商品を有する都市)にし、七尾から地方都市の未来を育てたいという思いで設立されたた市民大学。
『授業』という位置づけで、ファシリテータ養成講座など実務的な講座を開催する一方、七尾のディープな魅力をガッツリ学ぶ講座も開催しているとてもユニークなところです。
一階はコワーキングスペースになっており、仕事が捗りそうな吹き抜けの気持ちいい空間になっています。
こういうとこで仕事したいわまじで。
つい先日もファシリテーター養成講座が行われたそうで、かなり盛り上がったであろうことが窺えました。
こういうの、大抵は謎のクローズド意識で「写真撮らないで」「SNSに載せないで」と言われるんですが、「撮っていいし載せていいよ」と言って頂いたので、撮って載せました。
うーん、考え方が拓けてるなぁ。七尾世界都市構想、本気ですね。
あと一階にはチャレンジスペースがあります。七尾にはないお惣菜を紹介・提供しているニコデリさん
また、僕が伺った一週間前に、御祓川大学に関わるインターン生が中心となってオンパクサミットを開催したそうで、こちらでも白熱した議論が繰り広げられたようです。 (オンパクとは、元々の温泉泊覧会の枠組みを超えて、住民が主体となって地域の魅力を発信してこうぜという全国的な取り組み。詳しくはこちら
bancoを案内してくれたインターン生の吉良さんと長根さん。二人とも、これから何者にでもなれるであろうキラキラした目の若者でした。
楽しい未来を見せてくれた石川県七尾市。超注目です。
次は富山県富山市。 明日は誰に会えるのか。楽しみです。
【わらしべ通信】
石川県金沢市でトレードしてもらったネジ人形は赤なまこ石鹸に変わりました。肌がすべすべになるそうです。(まなこがどういう工程で石鹸になるんだろう…気になる)